3Dプリンタは、「何でもできる魔法の箱」じゃないって話!?-3つの制約
2011年頃でしょうか?100万円以下(ものによっては10万円以下)で購入できる3Dプリンタが出現し、ビジネスニュースや雑誌で情報が拡散されたのが記憶にあります。医療分野など臓器をモデリングしてカテーテル治療のシュミレーションに使えるとか、人工骨を作って欠損した部分に移植するなど。まさに夢のような技術ともてはやされました。しかし当時の情報はあまり詳しくなく「簡単に何でもできる!」と言った間違った認識を刷り込まれてしまった人が多いように思います。
実は、3Dプリンタは…「何でもできる魔法の箱」ではありません。本当は大きな3つの制約があるんです。この記事では、そういった3Dプリンタの制約をお話したいと思います。3Dデーター作成にも参考になると思いますので是非、最後までお付き合いいただければ幸いです。
表面性状がザラザラである
100万円以下で購入できるFDM(熱溶解)方式の3Dプリンタの原理は、溶かした樹脂を1層ずつ積み上げて造形します。デコレーションケーキのクリームを絞りながら積み上げてるイメージです。この原理からどうしても表面に縞ができてしまい、ザラザラな性状になってしまいます。この積層のピッチが0.3mmとか0.5mmなど設定で変えることができますが、ピッチを細かくすると積み上げるのに時間が長く掛かってしまうのが難点です。弊社のプリンタは最小積層ピッチが0.05mmにも設定できますが…
造形時間が長い =コストアップ
になるのであまりピッチを最小値に設定することはありません。また最小ピッチにしたとしても細かい縞はできますので、あまり小さくするのはおすすめできません。昔のファミコンの8ビットで画像のドットが少なかった時代のキャラクターのようにザラザラ、ギザギザになってしまうのは、原理上仕方ありません。
透明なものは作れない
FDM(熱溶解)方式の3Dプリンタでも使用可能な透明樹脂材料はありますが、上でも解説した”表面性状がザラザラ”になってしまうことから透明な状態に造形できません。くもりガラス(擦りガラス)は表面を荒く擦ることで透明度を落とすのと同じです。クリスタルガラスのように澄みきったイメージのものは原理上できません。
液体状の光硬化性樹脂をレーザー光線で固めて積層するSLA(光造形)方式ならば表面が滑らかにできるので透明な造形品も可能ですが、高価なのと仕上がりが黄色みを帯びたものになりますので、クリスタルガラスの様にはなりません。
積層方向を考えないと形状が安定しない
デコレーションケーキのクリームを何も支えの無いところに乗せたらどうなるでしょう?
当然、垂れて流れ落ちてしまうでしょう。3Dプリンタも溶けている樹脂を乗せていくので同じことになります。頭が大きいオーバーハング形状であったり、積層方向に穴があると重力に引っ張られるので形状が安定しません。そういう部分にはサポートという支えを設けなければなりませんがその分、材料を多く使ったり手仕事でサポート材を除去しなければならずコストアップになります。最近では水に溶ける樹脂材料をサポート材にする方法もありますが、原価が高いので使わないに越したことありません。設計段階から意識しておくのが懸命です。
3Dプリンタは、「何でもできる魔法の箱」じゃない話まとめ
3Dプリンタは、「何でもできる魔法の箱」と思われていますが、そうではないポイント3つをまとまると次の通りです。
- 表面性状がザラザラである
- 透明なものは作れない
- 積層方向を考えないと形状が安定しない
しかし、これらのポイントを考慮して使うととても便利なツールです。製品設計をしている方ならご存知かと思いますが、設計したら必ず評価するものです。外観や最終的な強度の確認には不向きですが、モックアップなど昔は切削加工&貼り合せで作っていたのに比べたら、安く、早く作れるのです。是非ポイントを押えて利用して下さい。
リンク:発明の試作品に3Dプリンター造形が適している5つの利点!
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